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【コメント掲載】阿部浩己教授「生活費はもらえて3分の2 ウクライナとの格差、難民らの複雑な思い」|朝日新聞デジタル

202252日(月)、阿部浩己教授のコメントが朝日新聞デジタルに掲載されました。

詳しくはこちら
「生活費はもらえて3分の2 ウクライナとの格差、難民らの複雑な思い」|朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASQ513VQCQ4WPTIL004.html?iref=pc_ss_date_article

(以下、一部抜粋)
ロシアの攻撃から逃れるウクライナの人たちへ、日本政府をはじめ、全国の自治体や民間が相次いで支援に乗り出している。こうした動きを、驚きと、どこか複雑な思いをもって見ている人たちがいる。同じように命の危険を感じて日本を頼って来たのに、難民として受け入れられず、強制送還におびえながら生きる人たちや、彼らを支援してきた人たちだ。

 昨年8月、イスラム主義勢力タリバンが政権を掌握したアフガニスタン。首都カブールを離れる米軍機にしがみついて祖国から逃れようとする人々の映像はまだ記憶に新しい。

 アフガニスタン出身で、埼玉県で長く暮らすユノス・イマミさん(50)には、祖国の親戚や、家族を案じる在日アフガン人から助けを求める声が相次いで寄せられた。

 「旧政府軍にいた人もいる。何人かは本当に命が危ない」。かねて支援してくれたカトリック大阪大司教区の社会活動センター「シナピス」の松浦篤子さんを頼った。

 松浦さんはスマートフォンの通話アプリで現地と連絡をとったり、日本への入国を認めてもらおうと出入国在留管理庁(入管)や外務省と交渉したりした。「当初は国も外務省を中心に何とかしようという思いがあるのは感じた」と松浦さん。

 だが、新型コロナウイルスのオミクロン株が広がり、11月下旬に水際措置が強化された後、国側の対応は鈍くなったという。  

 日本政府はアフガン人についても、いま日本にいる人は引き続き滞在できるようにするなどの措置をとっている。  

 ただ、ウクライナからは政府専用機や民間航空便の座席を借り上げてまで避難者を連れてきているのに対し、アフガン人は国際協力機構(JICA)などの関係者を除き、日本に身元保証人がいてもビザが出ることはめったにない。

 松浦さんが支援するアフガン人の中には、覚悟を決めて何とか隣国まで逃れたものの、日本のビザが出ないため、足止めを食らったままの家族もいる。松浦さんは「渡航費や生活費はこちらで持つので」と、各国の在日大使館や外国人宣教師らにかけあい、日本以外の国で受け入れてもらえるよう交渉している。

 「ウクライナの人を助けるのは良いことです」。ユノスさんはそう言いつつも、アフガン難民らへの対応とのあまりの違いは「差別」だと感じている。ユノスさんはタリバンや過激派組織「イスラム国」(IS)に迫害されてきたイスラム教シーア派で少数民族のハザラ人だ。カブールでは4月にもハザラ人が多い地区の高校で爆発があり、大勢が死傷した。「ウクライナのニュースばかりの時に、(アフガニスタンのことを)聞いてくれてありがとうございます」。ユノスさんは記者の取材のおわりに、こう話した。

 政府はウクライナから逃れる人たちを「避難民」と呼び、難民条約に基づいて法相が認定する「難民」とは別の枠組みで受け入れている。

 1951年にできた難民条約は、難民を「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員、政治的意見」を理由に「迫害」を受ける恐れがあって他国に逃れた人と定義している。近年ではこうした迫害だけでなく、紛争などから逃れる人も難民として認定されうるとの考えが広がっているが、日本政府は条約を狭義に解釈し、ウクライナの人たちは条約上の難民と異なるという立場をとっている。

 「避難民」と「難民」では、日本に入国した後の支援も大きな違いがある。ウクライナからの避難者に対して国は、ホテルや食事を提供し、ホテルを出て暮らす場合は一時金16万円、生活費として12歳以上は1日2400円を出すとしている。

 多くの自治体も支援を表明しており、大阪市は1世帯につき50万円の支援金を支給するほか、市営住宅を提供する。日本財団は生活費として1人あたり年100万円の支援を決めた。民間団体や企業も相次いで支援を打ちだしている。

 「空前の支援ブーム」。ある弁護士がこう表現するように、これまで日本で難民の受け入れにかかわってきた人たちにとって、こうした支援は考えられないことだった。

 ウクライナ以外の国の難民申請者にも、政府の委託を受けたアジア福祉教育財団難民事業本部が生活費を支給する制度があるが、金額は1日1600円とウクライナの3分の2だ。面接や預金の確認などの審査があり、支給はかなり困窮している場合に限られる。

 そもそも、日本で難民と認定されるのは、近年でも年1万人前後の申請に対し、40人余りときわめて少ない。申請を何度も繰り返したり、裁判で争ったり、長い月日をかけて認定された例も珍しくないが、その間はボランティアからの細々とした支援や不法就労などで、かろうじて食いつないでいるのが実情だ。

 世界の目がウクライナに集まるなか、紛争やクーデター、暴力的な人権侵害は世界各地で起きている。  

 大阪の支援団体「RAFIQ(ラフィック)」は、昨年10月に軍によるクーデターが起きたスーダンからの難民申請者6人を支援してきた。米国はスーダン情勢をふまえ、米国内にいるスーダン人には、就労もできる在留資格を一斉に認めた。だが、RAFIQが支援するスーダン人はいずれも日本で難民と認められず、その取り消しを求めて裁判をしたり、改めて申請したりしている。

 RAFIQの田中恵子さんは「ウクライナの人を保護しようという動きはうれしいが、日本にはクーデターや独裁政権から逃れ、祖国へ帰れない人がほかにも多くいる。支援を少しでも振り向けてもらいたい」と話す。

 なぜ、ウクライナからの「避難民」と他国からの難民への対応がこれほど違うのか。  

 野党議員との懇談会でこの点について問われた政府側は「(ウクライナからの受け入れは)国際社会でまれにみる暴挙が行われるなか、緊急措置として政府全体で取り組んでいる。それ以外の方々への対応と一概に比較して論じることは困難」と答えた。

 難民の支援者たちからは「夏に参院選があるので、政権は世間で注目されている問題で良い格好をしたいのでは」「人種に対する社会の偏見の現れだ」といった声が聞かれる。

 4月23日にオンラインであった難民の受け入れを考えるシンポジウムで、国際法に詳しい明治学院大の阿部浩己教授は「ウクライナからの受け入れは、人道支援という名のきわめて政治的な判断。ロシアやNATO(北大西洋条約機構)、米国との関係で、日本のスタンスを明確にしたのだと思う」と述べた。一方で「今回で難民への関心が高まったのは良いこと。世界から日本にも多くの難民が来ていることを知ってもらい、手を差しのべていく契機にしていければ」と話した。

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