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Graduate School

大学院 国際学研究科

国際学研究科理念

国際学研究科理念

世界が直面する諸問題に、横浜から取り組む志

国際学研究科の土台となっている国際学部は、1986年、横浜に開校しました。幕末に日本が新しく世界に向かって新しく開いた港、そして明治学院の祖たるヘボン博士ゆかりの地です。国境を越えて真理を追究し、自らの利益だけを追い求めるのでなく皆のためを考え、世の中の役に立ちたい、という明学スピリット。1990年には、それをさらに追求するために国際学研究科が設置され、今日に至ります。

いま、人類は、さまざまな地球的課題に直面しています。身近な問題に関しても、他の国々で同じようなことに取り組んでいる人々がいるのです。研究者・実践者の新しいネットワークや、従来の学問分野を横断・再編成する新たな知的枠組みが求められ、諸外国でも高等教育の分野で模索が続けられているところです。

国際学研究科は、そうした知的挑戦に果敢に取り組む若者たちの志にこたえられる大学院であるよう、努力を続けています。カリキュラムは従来の学問体系にとらわれない編成をとり、博士前期課程のコースワークは「日本・アジア研究」、「平和研究」および「グローバル社会研究」の三領域をカバーしています。前期・後期課程とも、学生は指導教員の丁寧な個別指導の下で専攻分野の研究を深めるだけでなく、問題意識に応じて別領域の科目を履修したり、他の教員の指導を求めることもできます。
本研究科では、通常の入学試験に加え、「社会経験者入学試験」制度を設けています。この制度は、社会・職業人として一定の経験を有し、学習・研究意欲に富む方々に対し、大学院の門戸を開放するものです。開かれた心で学問を追究する横浜コミュニティの一員たらんとする人を、国際学研究科は待っています。

研究科からのメッセージ

国際学研究科委員長

合場 敬子 教授

私が米国ワシントン州東部の大学院に入学後、第二学期目に履修したクラスでは、担当教員が選定した、ジェンダーに関する様々な理論や実証研究の論文を、学生は事前に読むことが要求され、授業時間には、学生同士で課題文献の内容について議論をしていました。私を含めた多くの大学院生は、先生が読むことを要求している文献なので、そこで使われている理論的な枠組みや視点をどちらかというと素晴らしいものであり、自分の思考もそれに合わせようとする姿勢で議論をしていました。ところが、その教員は毎回、私たちの無批判に文献の内容を受容しようとする姿勢や思考を批判し続けました。

学期が進むについて、私を含めた多くの大学院生は、困惑してきました。なぜ困惑していたかというと、当時の私たちは、大学院では何か完璧で有用な理論や視点を先生が提供してくれ、それを学んで自分たちの研究テーマに応用すればよいと思っていたからです。しかし、担当教員は相変わらず、次から次へと課題文献の弱点を指摘していきます。ある時、アメリカ人の学生が、その教員に「あなたが好んで使っている理論はありますか?」と尋ねました。すかさず彼女は「ありません。」と答えました。その時、私は思いました。現時点ではすべてを説明できる理論など存在しない。できることは、先行研究の理論や視点を批判的に検討すること。そこから、より有効な理論や視点が生まれてくる可能性があるのだと。

つまり、私を含む多くの大学院生には批判的思考力が欠如していたのです。批判的思考力は学部学生にも大切ですが、大学院生にとっては欠くことができない、もっとも重要な能力だと思います。大学院生の皆さんには、先行研究の優れた点を継承・発展させつつ、批判的思考力によって、先行研究で矛盾していること、曖昧になっていること、明らかになっていないことを発見し、それらを自らの研究テーマとし、新しい知の地平を切り開いていくことを期待します。

国際学研究科国際学専攻主任

平山 恵 教授

COVID-19、ウクライナ危機、そしてそれに続く軍事拡張の動き。未曾有の危機が次々と起こっています。そんな中で私たちは学問する。この意味は何でしょうか。

COVID-19がなぜこんなに驚異的になったのか。ロシアがなぜウクライナで戦争を始めたのか。すべて理由があります。理由はさまざまですが、それが「私たち人間が起こした問題である」ことはご承知でしょう。

私は1994年のルワンダ虐殺を契機にアフリカに関わり始めました。50万から100万人が殺害され、前世紀最大数の難民を出した事件でした。実際、あれほど多くの死体を見たことはありませんでした。初めはアフリカによくある植民地経営の負の遺産とツチとフツの民族紛争の結果だと考えていました。しかし、文献と現地調査を進めていくうちに、この虐殺が国際政治の犠牲であり、最終的には日本と虐殺との関係も見えてきました。定説をいったん横に置いて、自分で探求することの大切を再認識しました。その後、他の地域の紛争ひいては平和問題を研究しています。政治、経済、歴史、文化、さまざまな分野の知識を駆使して分析します。一人で考察していても息詰まることが多いので、他の専門家の知恵を乞います。異なる専門性を持つ人と話し合うことで見えてくるものがあります。

国際学研究科にはさまざまな専門性をもった教員が集っています。研究するだけでなく、研究成果を発表したり、長期的な視野に立った政策提言したり、実務家にアドバイスを行う等、社会に貢献しています。

危機的時代だからこそ多くの人の知恵が必要です。本当の民主主義、デモクラシー「民衆の力」(ギリシャ語でdemos民衆、kratia力)を発揮するために徹底的に議論する必要があるでしょう。研究科では、一見解決できそうにないと思える課題に対して小さな問いを積み重ねていきます。その結果、「民衆の力」をけん引してくれるような人が育ってくれればと望んでいます。