
講義科目紹介(一部)
国際学科の6専攻のうち、国際学部の特徴である学際性にもとづく、「平和」「環境」「多文化社会」の3専攻と、文化、経済、法・政治などの複眼的なアプローチで地域を理解する「地域研究」の講義内容をそれぞれ3つの科目を通じて紹介します。
- 「平和」専攻
- 「環境」専攻
- 「多文化社会」専攻
- 「地域研究」
「平和」専攻
現代文学論
助川 哲也
ハンセン病問題を背景に、人間存在の普遍的な意味を描こうと思い、『あん』という小説を書きました。そんなもの誰が読むのか、と原稿を突っぱねた出版社もあります。
でも、今、この小説は世界中で読まれています。辺境のなかにこそ、人間がいます。逆境のなかにこそ、希望があります。
授業では、ハンセン病文学や沖縄文学を読み、あるいは兵士たちの手紙に触れ、人間が本当に望むもの、究極の希望について考察していきます。
いわば、「希望学」。難題が積み重なるこの世界に対し、希望のスペシャリストを育てます。
平和学1
浪岡 新太郎
平和学とは「これがあったら生きていけない、と一人ひとりが思うもの」を「暴力」と考え、この「暴力」をできる限り減らそうとする学問です。
暴力の形は、戦争やテロなどの国際・国内政治において生じるもの、暴動などの地域で生じるもの、さらには貧困やいじめ、差別などの身近な日常生活で生じるものまで、多様です。
講義では、私たち一人ひとりが経験する生きづらさにこだわって、私たちが多様な暴力の仕組みにどのように埋め込まれているのか、どうしたら自由になれるのかを考えます。
南北問題
賴 俊輔
平和の「和」という字は、穀物を表す「禾(のぎ)へん」に、「口」と書きます。平らに(みな平等に)食べられることが平和な状態だと言えるかもしれません。
世界で起きている紛争の背後には、貧しさや無知があります。他者への不寛容や社会の分断の背後には、失業への恐怖や将来の見通しのなさがあります。
この講義では、グローバル化のなかで、途上国・先進国を問わずに起きている問題について、経済の領域から考えます。
「環境」専攻
環境経済論
林 公則
農を中心とする生活を営んできた人類は、近代化以降、急速な工業化を成し遂げました。
それにともない空前の物質的な「豊かさ」がもたらされたわけですが、一方で水俣病や地球温暖化をはじめとする深刻な公害・環境問題が発生しました。
現在では企業や国に環境に配慮しないという選択肢は無くなっており、むしろイノベーティブな姿勢で環境問題に取り組むことが求められています。
そういった取り組みの一つが社会的金融(社会のためになることにお金を融通すること)になります。
過去に学ぶのはもちろん、20年、30年先を見据えながら、講義を展開します。
社会開発論
平山 恵
「望ましい」社会を探るべく、社会変動、社会進化を歴史的にたどり、現在の政策やそれに基づいた社会計画を実践するための社会ガバナンス論、社会運動論等を学びます。
経済学、社会学に加えて、動植物との共生社会の実現を可能にする環境に配慮した視点で持続可能な社会の在り方を考えます。
特に、自由経済や社会統制の位置づけをグローバリゼーション下の社会構造と自分自身のあり方に引き付けて考察します。
地誌概説1,2
森本 泉
地域を理解するとはどういうことでしょうか。観光地に行って、「百聞は一見に如かず」と納得した経験があるかもしれません。
しかし、美しい景色を観光客に見せるために展望台や車道が敷設され、外部資本のホテルが造られる等、その過程で自然環境や社会環境が破壊されることがあります。
「見る」為に、地域が変容させられているのです。本講義では、目に映る地表ではなく、地域を複眼的に捉え、動態的に理解するための地域認識の方法を習得することを目指します。
「多文化社会」専攻
キリスト教文化論
久保田 浩
「キリスト教」は2000年にわたって全世界に普及していった過程で、それぞれの時代と地域の政治的、経済的、文化的文脈の中で、きわめて異なった(時には相対立するような)相貌を呈してきました。
つまり単数形ではなく複数形のキリスト教なのです。本講義では、地域と時代ごとに異なった社会的価値と機能を帯びる複合的な文化現象である「キリスト教」に着目し、狭い意味での「宗教」を超えた宗教文化が社会内でもっている可能性と問題とを論じていきます。
歴史学
戸谷 浩
歴史学は、過ぎ去った出来事を扱うだけの「過去の学問」ではありません。
それは、自分たちの周りの社会について考える「現在の学問」、あるいは自身がどう生きてゆくのかを考える「未来の学問」でもあります。
でも、周りの社会とはどんな社会でしょう。あなたの「隣人」にはどんな人たちがいますか?一見して発展して平和であるようで、社会問題は山積しています。
「現在と未来の学問」である歴史学は、そうした社会問題に向き合うのに相応しい学びだと思っています。
国際関係論
半澤 朝彦
現在の国際社会は、「日本」と「外国」を分けて考えられるほど、単純な形にはなっていません。
「日本」の中にたくさんの「外国」が入り込み、「日本」もまた外の世界に浸透しています。経済や文化ではもちろんですが、人間や情報も越境して「重層的」になっているのです。
世界全体では、その変化はもっと加速しています。政治外交でさえ、そのことを無視しては行えないことを学びましょう。
「地域研究」
西アジア地域研究
大川 玲子
「西アジア」とはどこでしょうか。「中東」とほぼ言い換えられます。この二つの言葉にはニュアンスの違いがあります。
「西アジア」と言えば文明史のロマン、「中東」と言えば紛争、テロ、イスラーム・・・。
私の専門はイスラーム思想研究なのですが、この授業では西アジア/中東の文化についてイスラームを中心に考えていきます。
その際、ユダヤ教やキリスト教、そして日本文化との対比が重要な鍵となります。目指すところは、この地域を通して文化理解・文化共生を考える土台を作ることです。
アメリカの文化と社会
野口 久美子
「コロンブスのアメリカ大陸発見」は、アメリカやスペインの国家の祝日から日本にいる私たちの教科書にいたるまで、現代社会に大きな影響を与えた「歴史」として記憶されてきました。しかし、こうした記憶からは、コロンブスが「発見」した大陸そのものの姿は十分に見えてきません。その大陸には、すでに先住民が多様な社会を築いていました。北アメリカ大陸だけでも500以上の集団が存在し、200以上の多様な言語が話されていたのです。この講義では、言語や文化、政治、社会、ジェンダーなど様々な観点から、先住民の大陸史に入植者植民地国家としてのアメリカ、カナダの歴史を位置づけなおすことによって、「アメリカの歴史と現在」を考えます。
アフリカ地域研究
井手上 和代
みなさん、「アフリカの毒」という言葉を聞いたことはありますか?私はその毒にやられたのか、「アフリカ」は長らく私をつかんで離さない対象であり続けています。
今は人々の普段の生活に切り離せない「経済」という切り口からアフリカの理解を深めていますが、授業では経済の他にも文化、芸術、歴史、政治なども取り上げたいと思います。
アフリカを知ることを通して、これまでのものの見方や考えが揺らぎ、世界がさらに広がります。みなさんもアフリカの毒を食らってみませんか?