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1.はじめに2.貨幣経済の仕組み2.1.貨幣を用いた貸し借りと投資の重要性 本報告(フォーラム)では貨幣が経済に与える影響を分析して次の点を論じた。すなわち、①貨幣量の制約が経済成長の制約になること、②したがって長期的に貨幣量が増え続けたこと、③中央銀行と政府の持つ貨幣量調整能力は従来の解釈より大きいこと、④負債が貨幣を生むので負債額≒貨幣量であること、⑤したがって負債額は増え続けなければならないこと、⑥そのため、民間債務が減れば政府政務が増えなければならないこと、⑦負債額(貨幣量)の増加によって過去の負債が返済可能になること、⑧貨幣量(負債額)の増加に伴うインフレが債務者側の実質債務負担を減らすと同時に債権者・投資家側の貸付・投資を促すこと、⑨したがって貨幣量は増え続けて緩やかに減価すべきものであること、⑩近年では貨幣量(負債額)が増える中で低インフレが続くことに問題があること、⑪貨幣量・物価変動によって債務者の実質債務負担と債権者の実質利益が変わる点はマクロ経済学のミクロ的基礎付けになることを論じた。 本報告で用いる分析方法は、経済指標の比較、特定条件を設定した上でのシミュレーション、歴史的考察、そして論理的推論である。従来の経済理論との関係は最後に説明する。通常は先行研究を冒頭で紹介するものだが、本報告は包括的な説明を提示しているので、その全体像をまず説明した後に先行研究と比較した方が分かりやすい。 貨幣は様々な面で経済活動の役に立つ。財・サービスの取引を容易にし、物を積み上げる以外の方法による蓄財を可能にし、貸し借りや投資による経済活動の促進をもたらす。特に貨幣の貸し借りと投資は、近現代の貨幣経済を大きく特徴づけるものである1。前近代から近現代にかけた金融制度の発展(送金・決済システム、株式市場・債券市場の普及、近代的金融機関・中央銀行の誕生、関連法律の導入など)は、貨幣を利用した貸し借りと投資を著しく促進した2。 それは高い経済成長率を支えるものであった。たとえ成長の主因が技術革新であっても、技術の開発・応用・普及のための貸し借りと投資が滞れば、成長速度は遅くなる。もし現存する企業が銀行貸出や社債発行や株券発行を通して資金調達ができないとなれば、企業による技術開発・雇用・生産・消費が著しく縮小する。債務不履行と投機によって信用危機が多々生じるという負の側面もあったが、貸し借りと投資の拡大がなければ長期の成長率はより低かったであろう。 85貨幣経済の仕組みリーサンベック

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