HTML5 Webook
80/142

2.ビジネス企業政党という政党スタイルの拡大 ANOのような政党は、新興民主主義国で観察され、ビジネス企業政党という枠組みで分析が行われている。イタリアのベルルスコーニのフォルツァ・イタリアが顕著な事例であり、ポーランドでは、ビジネスマン、ヤヌシュ・パリコットが起こしたパリコット運動やエコノミストのリシャルト・ペトルによる「モダン」、スロヴァキアでは実業家スリークの「自由と連帯」、メディア・ネットワークオーナーのマトヴィッチの「普通の人々」が挙げられる。チェコではANOのほか、警備会社経営者バルタの「公共」、実業家トミオ・オカムラの「夜明け」や「自由と直接民主主義」もこれにあたる。 ただ、どの政党をビジネス企業政党に含めるのか、論者によって強調点が異なることもある。論点は、政治的起業家Political entrepreneurについて、①シュンペーター的な意味で、つまり外部からきてイノベーションを実現する創造的な企業家という意味で使うのか、②加えてその政治的起業家が、実際に経済の世界で経営者として活動する文字通りの企業家でもあるのか、である。①の意味で個人的イニシャティブで作られた政党を広く企業家政党と呼ぶ場合もあるが、①かつ②の場合は、経済の世界での成功によって、ガバナンス能力を示した企業家が、企業の資産、個人資産、ノウハウを使って政治活動に乗り出すことになる。後者の場合、その政党運営の目的には、企業の利益のための政治活動利用も想定される。 また、①の意味での政治的起業家は、既存政党やその他の新党にも拡大している。オーストリアの人民党のイメージ転換を実現したセバスチャン・クルツや、フランスのエマニュエル・マクロンが設立した「共和国前進」の手法や主張にはANOとの類似性が見られる。引き出すことを狙っているのである。 2017年選挙の主張をみると、市民の安全のためにヨーロッパの外縁国境を移民とテロから守る、財政を均衡させるなどの安全のテーマ、鉄道、高速道路、学校、スポーツ施設、保育園、教員給与引き上げなどの国家や人への投資のテーマなど、ヴェイレンス・イシューが並んでいる。ヴェイレンス・イシューとは、大部分の有権者が同じ結果を望む争点であり、国民の間で意見が分かれるポジショナル・イシューと対比される。②消費者戦略 具体的な政策を作るためには、世論調査を活用し、ターゲットグループごとにテーマを使い分けて訴えるなどの手法がとられた。つまり、政策は市民=消費者の需要を中心に作られるのである。選挙キャンペーンの専門家による洗練された政治的マーケティングが行われ、SNSも活用された。③バビシュ個人の政党 この政党のもう一つの特徴は、バビシュという設立者兼党首の存在感の大きさにある。バビシュはアグロフェルトという企業のオーナー経営者で、この党の設立を決めたのも、そのための初期費用を出したのもバビシュであった。党員志望者にはCVを提出させ審査するなど企業的な方法を党運営にも導入し、意思決定プロセスを中央集権化することで、イデオロギー的な方向性を持たない党の空中分解を防いでいる。72

元のページ  ../index.html#80

このブックを見る