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 2021年度年報を刊行する。今号は、5本の研究報告と、2本のセミナー・シンポジウム報告、5本のフォーラム報告を収録している。研究報告に特に注目したい。研究報告は、「サウンドスケープと平和研究」、「途上国の経験からみた日本の農村コミュニティ開発における新たな担い手とメカニズムに関する研究」、「デモクラシーの多様性」、「宗教的境界の変容」、「エコキャンパスプロジェクト」であった。どの研究も、さまざまな共同生活の場に注目し、その境界線の変容と、変容によって生み出される新たな共同生活のあり方に注目している。 国際学研究は、既存の共同生活の境界線が暫定的なものであること、境界線を超えて人々が交流すること、この交流を通じて境界線が変容することに注目してきた。現在、さまざまなマイノリティの包摂が重要視されるようになり、既存の境界線の変容が積極的に行われている。多文化の尊重や他者の理解といった言葉は肯定的に評価され,多文化主義政策として具体化している。 他方で、多文化主義が定着したとされる地域においても、ポピュリズムや排外主義の拡大が懸念されている。境界線を超えて交流することは、他者の理解を余儀なくさせ、それまでの共同生活の場を問い直すことにつながる。交流には手間がかかるのだ。手間をかけるよりは、既存の境界線にとどまる、あるいは、より手間のかからないかつての境界線に回帰するということもある。 国際学研究の成果が、交流において手間をかけることの重要性を評価し、国際学部・国際学研究科の教育や研究に活かされることを期待したい。 2022年10月国際学部付属研究所所長 浪岡新太郎205巻頭言

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