報告1 孫 占坤「『9・11』から『アラブの春』へ 〜国際社会における『法の支配』と『力の行使』」報告2 増田 育真「社会・国家再建を考える 〜事例1 シリア支援の現状について」報告3 永井 仁乃「社会・国家再建を考える 〜事例2 タリバン復権後のアフガニスタンの現場から」 以下、各研究会の報告内容を要約させていただく。 第1回研究会において、報告者は尖閣諸島問題に関する日本外務省の資料公開を事例として、日本における情報公開の遅れを指摘した。尖閣の領有権争いをめぐり、日中の間に「棚上げ」合意が存在したのか。これまで三度にわたり関係の外交文書の開示を求めた報告者に対して、日本外務省が開示した文書の大半は黒塗りのものであった。情報公開の実態は、「情報公開法」(1999年5月国会採択、2001年4月から施行)が目指す行政機関の情報公開を通じた政府諸活動の「公正で民主的な行政」とはどれほどの乖離があったか、改めて考えさせられた。 第2回研究会は元国際学部長・明治学院大学名誉教授で、現在ミャンマー在住の江橋正彦先生から、軍事クーデター後のミャンマーの現状について報告し、同国今後の発展の行方についても展望してもらった。2021年2月1日の軍事クーデター以降、ミャンマー軍側は国家行政評議会(SAC)を設置し、テインセイン政権時のような方法で経済開発と和平を実現し、選挙に臨む予定だったが、想定を超える広範な抵抗に遭い困惑している。同年4月16日に軍事政権に抵抗する側は、国民統一政府(NUG)の設立を宣言し、9月7日に「全国防衛戦争」を宣言して軍事政権との徹底的な対決を強めている。ミャンマー社会に広がる軍事政権への反感、抵抗は広範囲なCDM(市民不服従運動)を生み出しているだけではなく、一部は従来からミャンマー政府と武力闘争をしてきた少数民族武装組織との連携を図り、ミャンマー各地に民兵武装組織(PDF)が結成されている。PDFによるテロ活動や国軍との戦闘激化で、ミャンマー社会はもはや「『デモ』から『内戦』」へ入っている。 このような深刻な状態を呈するミャンマーに対して、ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧米諸国の関心が薄れている。アメリカは中国の影響力拡大を阻止するため、インド太平洋地域の戦略的要地にあるミャンマーを中国に追いやることを避けたい、また、シリアのような内戦に導くことへの恐れもあり、NUG側への武器支援に躊躇している。一方、ミャンマー国軍側に兵士不足が起きているが、2021年初頭に兵力は30万から35万人、政権が戦場に投入できる戦闘兵の数は10万〜15万と専門家は推測している。このような軍事政権側と抵抗する側の圧倒的力のギャップに直面して、後者は前者と戦うための通常戦力の獲得にはほど遠い状態である。従って、2023年8月の選挙と新政権の誕生までミャンマーでは軍政が続く見通しである。その間、様々な問題について国際社会は現状の軍事政権とコンタクトしなければならないので、軍事政権に対する「事実上の承認の拡大」も意味する。34
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