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といえよう。Ⅳ.まとめと次年度の課題 今年度の研究活動を通して、地域おこしに関与する外部者と地域社会の関係について、次の2つの特色を指摘できるように思う。 ひとつは、「地域社会のシステムとしての強固さ」である。地域社会に蓄積されてきた社会システムは、現在においてもその組織力を失ってはおらず、外部者の関与のあり方もそれに強く規定されている。下呂市の中原地区と上原地区の違いは、それを如実に表している。隣り合わせの両地区ではあるが、中原地区では住民が集落(ムラ)を組織活動の単位として意識しているのに対し、上原地区では地区全体を単位とする意識がある。なにを(どの社会的範囲を)集合行為の単位として「当然視」するかによって、効果のある集合行為の働きかけかたは異なってくる。そのことを地域住民のリーダーも集落支援員も暗黙のうちに理解しており、それに適した地域おこしの方法を採用している。いすみ市の地域おこしがいすみ市を単位として、また美山町の地域おこしが旧村単位で組織されているのも、同じ理由からである。まさに「地域社会の組織力」に見合った働きかけ方しか、開発支援者はできないのである(重冨, 2021)。 もうひとつは、「地域社会の人的な空洞化」である。具体的には、地域社会システムの担い手が高齢化し減少してきているということである。その結果、外部者が地域リーダーの代わりを務めなければならなくなってきた。外部者の制度的関与が必要になってきている。美山町の地域おこしは、町行政が地域社会に入り込んで組織活動の事務局を担ったことで可能となっていた。それゆえに、行政が引き上げると、地域社会にそれを担い続ける力はもともとなかったのである。さらに人口が減れば、日常的な自治活動すら地域社会では担えなくなるだろう。じっさい京北でも美山町でも、そうした集落が出てきているそうだ。 つまり、地域社会のシステムが「地域おこし」のあり方を規定しているのに、「地域おこし」をおこなう人材がなくなりつつあるのが、現在の日本農村地域社会だといえる。 このような特色をもった日本の農村において、行政や外部者が住民の側の組織メカニズムとどう関わっているのか。外部者は何をどのように代替し、地域住民はそれにどう反応しているのか。こうした点に注目して次年度の研究を進めたい。とくに自治体とその行政制度の変化は重要な調査項目であろう。また、地域おこしを意図していなくても、地域への関与が地域社会での組織メカニズムに何らかのインパクトを与えている場合があるだろう。地域おこし協力隊は、自己実現がひとつの、そして重要な参加動機になっている場合が多いが、「結果として」地域社会の活性化につながっている場合がある。また起業者の誘致、企業の進出などの事例も、調査対象となるだろう。〈引用文献〉『朝日新聞』(2020)「千葉県いすみ市職員■田晋さん(44歳) 人々巻き込み有機米で給食」10月3日。『現代農業』(1998)「定年帰農─6万人の人生二毛作」2月増刊号。─────(2002)「青年帰農─若者たちの新しい生きかた」8月増刊号。─────(2005)「戦後60年の再出発─若者はなぜ、農山村に向かうのか」8月増刊号。途上国の経験からみた日本の農村コミュニティ開発における新たな担い手とメカニズムに関する研究(中間報告) 31

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