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2.9.貨幣とは何か者の負担が減るということは、言い換えれば、インフレが続くと債権者側は必ず損をするということだろうか?  インフレによって債権者側が損をすることが原理的に決まっていれば、お金を貸す人はいなくなるはずなので、貨幣経済は成立しないであろう。だが、貸し付け・投資・貨幣経済は拡大している。インフレによって債務者の負担が確実に減るにもかかわらず、それが必ずしも債権者の損失につながらず、債権者がむしろ利益を得られる理由は何か?  その答えは再投資にある。再投資とは、投資や貸し付けで得た利子・配当・レント・売買益を再び投資や貸し付けに投入することを指す。再投資をすることによってのみ、債権者と投資家側はインフレによる損失を免れることができる。 どうしてそうなのか。再投資をしない場合と、再投資をする場合を比較してみるとその点が分かりやすいので、単純化した事例を比較してみよう。   再投資をしない場合:ある人が年利1%を約束する金融商品に100万円投資し、毎年手に入れた年利(1万円)を再投資せず、手元に置いたとしよう。30年後、その人が投資で得た利益は30万円(30%)である。他方、その30年間の毎年のインフレ率は0.9%だったとする。インフレ率より金利の方が0.1%高い状態が30年間続いたことになる。だがその30年間に物価は30.8%上がっている(0.9%×30ではない)。30年間の投資利益率よりも物価上昇率の方が高いのでその人は実質的に損をしたことになる。   再投資をした場合:ある人が年利1%を約束する金融商品に100万円投資し、毎年手に入れた年利(1万円)を同じ商品に再投資したとしよう。30年後、その人が投資で得た利益は複利効果によって34.8万円(34.8%)となる。他方、その30年間の毎年のインフレ率が0.9%だったとすると、30年間に物価は30.8%上がっている。30年間の物価上昇率よりも投資利益率の方が高いのでその人は実質的に利益を得たことになる。 以上の例では、各年の金利がインフレ率より高い状態が続いても、再投資をしない場合は利益率がインフレ率を下回り、投資家が損をすることが確認できる。また、利益率がインフレ率を上回るためには、再投資をして複利を得ないといけないことが分かる。 そして以上の現象を理解することでもう一つ貨幣経済の仕組みが導き出される。インフレが投資を促す点である。インフレに負けないためには、投資で得た利益(貨幣)を手元に長くおいてはならず、すぐに再投資に使わなければならない。インフレ率が高くなるほど再投資を怠ることによる損失は大きくなる。これが貨幣経済において投資と貸し付けが急かされ、促進される仕組みである。 これまでに説明してきたことを合わせると、貨幣経済と貨幣について次のことが分かる。貨幣経済の仕組み111

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