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(1) マネーストックは全ての貨幣供給量を反映していない 一つ目の誤りは、市場に存在する全ての貨幣量をマネーストック(M1, M2, M3, 広義流動性)が反映しているわけではない点を見落としていることである。以下で見るように現在のマネーストックの集計には含まれていない貨幣量をそれに含めると、マネタリーベースとマネーストックの増加率の乖離は縮まる。つまり、中銀による貨幣供給が市場全体の貨幣量に与える影響は、従来の解釈よりも大きいということになる。 ではマネーストックに含まれていない貨幣とは何か。その点はマネーストックの集計に何が含まれているかを確認することで分かる。図表7が示すように、集計範囲が一番広い「広義流動性」には様々な金融資産が含まれてはいる(債券のような金融資産が貨幣供給量に含められていることに違和感を持つかもしれないが、現金化がしやすい点で広義の貨幣であると解釈される)。しかし、国債や金融機関の社債は含まれるものの、一般企業が発行する社債は含まれない。また、株券も、投資信託の中の株は含まれているものの、市場全体の株券を含むわけではない6。 国債と金融機関の社債を含めて、一般企業の社債と株を含めないのには理由があるとしても(流動性の度合い、リスクの度合い、値動きの激しさなど)、大量の貨幣が社債や株の購入に流れていないわけではない。無論、貨幣で購入されたものなら全てマネーストックに含まれるべきということではない。貨幣が何かの支払いに使われたなら、それは誰かの収入になり、どこかの時点で預金になるので、それはすでにマネーストックに含まれている。だが現存の社債と株はそのまま資産として保有されているものなので、その分の額は預金へと還流せず、マネーストックに含まれない(企業が社債と株で調達した資金を何かの支払いに使う分は預金になるので、含まれている)。 株は「資金循環統計」の枠で集計されているので7、それが集計過程で看過されているわけではない。だが筆者がここで問題にしているのは、株と一般企業の社債を含まないマネース トックをマネタリーベースと比較して、後者による前者への影響が弱いと論じることにある。 では社債と株券をマネーストックに含むとどれほどの額になるのか。残念ながら、すでにマ図表7 マネーストック・マネーサプライ(日本)出所)日本銀行「マネーストック統計の解説」M1=現金通貨+預金通貨現金通貨=日本銀行券発行高+貨幣流通高預金通貨= 要求払預金(当座、普通、貯蓄、通知、別段、納税準備)−調査対象金融機関保有小切手・M2=現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨)M3=現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨)手形広義流動性= M3+金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債+外債96

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